元々武術の各流派は、神社仏閣などの宗教的な場所で超越的な体験をした武士によって創始され、自然の中に身を置くことで、動物の動き、木々が風にそよぐ様子、滝水が岩を叩きつける様子などからインスピレーションを得ていたと言われています。また、天狗が秘術を伝授したり、ツバメが飛翔中に真っ二つになるといった、神秘的で超自然的な物語が浸透していることも特徴です。
武士が目指したのは、効率的で効果的、かつ優雅な動きでした。武士として生きるということは、より良い人間、また模範的な市民のモデルになるということでもあったため、どの道場でも乱暴で無意味な殺傷を禁じていました。
また、心の修養を目的としていた剣術の修行では、厳しい稽古と極度の集中によって、武士は無念無想の境地に達し、執着や先入観から解放され、どんな状況でも即座に対応できるようになることをいつも目標にしていました。
刀は、武士の魂、社会的地位、信念、哲学を体現しています。刀を納める鞘や刃を包む金具には、自然や動植物をモチーフにした深い意味合いのある装飾が施されており、芸術と戦争の狭間にある侍の刀は、精巧に作られた芸術品と言えます。刀は凶器であると同時に、社会や主君への義理を常に意識させるものでもあります。薩摩刀には、他国の武士が持つ刀とは異なるいくつかの特徴があります。一つは、刀の柄によく見られる二つの小さな穴。これは、刀を鞘にしっかり納め、安易に刀を抜かないようにするためのものです。